LWPのプロダクトに、Mac Book AirやiPad Airの細かな傷を防ぐスリーブが登場しました。紙のように薄くて超軽量――、その素材は「Dyneema®(ダイニーマ)」です。ダイニーマ®繊維は、アパレル用品やキャンプ用品だけでなく、大型船をけん引するタグロープや釣り糸、自転車レースのユニフォーム、防弾チョッキまで、あらゆるフィールドで厚い信頼を得ているとてもすごい素材なのです。
私たち取材班は日本でダイニーマ®の事業開発を手掛けるアビエント・ジャパンの鳥野見雅志(とりのみ・まさし)さんにお話を伺うことができました。
インタビューの前編ではダイニーマ®繊維の魅力について、後編ではLWP003〜005に使用している「Dyneema® Composite Fabric(通称DCF)」についてお話を聞いたようすをお届けします。(後編)
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鳥野見雅志(とりのみ・まさし)さん
アビエント・ジャパン株式会社 シニア事業開発マネージャー。世界で事業展開する日本企業の化学部門に所属し、次世代自動車用エアコンの冷媒の開発営業として、ドイツを拠点に活動。その後、当時ダイニーマ®の開発・販売を手掛けていたオランダDSM社に入社。ダイニーマ®事業部門がアメリカのAvient Corporationに移ったことで、DSM Protective Materials社はAvient Protective Materialsに社名を変更。現在はアビエント・ジャパンに所属して、日本におけるダイニーマ®の事業開発に携わっている。
Film SleeveシリーズLWP003〜005に使用しているのは、Dyneema®(ダイニーマ)繊維で作られた「Dyneema® Composite Fabric」という素材です。この通称「DCF」と呼ばれる生地について、その特徴を教えてください。
DCFは、ダイニーマ®繊維を縦横に並べて主にポリエステルフィルムでラミネートしたコンポジット生地になります。LWP003〜005に採用いただいたCT2K.18(品番)は1オンスの薄手のタイプで、軽くて紙のようにハリがあります。特に新品のうちはシャカシャカした感じと透け感がありますが、使い込むうちに柔らかく馴染んでいくはずです。
DCFは、どのような目的で開発されたのでしょうか。
1851年から現在まで続く世界最高峰の国際ヨットレース「America's Cup」において、「America³(読み:アメリカキューブ)」というチームの開発者が開発したもので、帆に使う軽くて強い素材を模索した結果、DCF(当時は『cuben fiber』)が誕生したそうです。その後、宇宙産業で注目が集まったのち、インターネット上で「謎の素材」としてたちまち知名度が上がったと聞いています。
海上や宇宙といった過酷な環境で注目を浴びる優れた素材だからこそ……なのだと思いますが、LWP003〜005を含む市場のダイニーマ製品は値段が高いと感じる方も多いと思います。
そうですよね。実はダイニーマ®繊維の原料であるポリエチレン自体は安価なんですよ。分子量を高めた非常に硬いポリエチレンをぐにゃぐにゃのゲル状にして、シャワーのように型から押し出すことで繊維にするのですが、この工程はあまり生産性が高くないんですね。つまり、繊維の製造コストが高いので布や製品がどうしても高価になってしまうのが現状です。
なるほど、そういうことだったんですね。そのDCFを使用したLWP003〜005について、素材の取り扱い方法を教えてください。
原料のポリエチレンは熱に弱いため、DCFは70度以上の温度で使用したり、それ以上の温度でのアイロンがけなどは禁物です。汚れた場合はきれいな布で早めにふき取っていただき、洗濯は避けてください。とはいえダイニーマ®繊維自体は水分を一切吸わないので、通常の使用においては、水分や空気中の湿気によって発生する加水分解の心配はまったくありません。
それから、くしゃっとしたり戻したりを繰り返して使っていくうちに生地が縮んでいきます。これは、糸を構成している何本もの繊維(フィラメント)が絡まっていくことで生地全体が縮む現象で、引っ張っても元には戻りませんが、LWP003〜005の場合は使用するうちにデバイスへのフィット感が増していくと思います。DCFの特徴を製品に活かしていただいていますね。
ダイニーマ®繊維は、ほとんどの化学薬品に対して安定していて紫外線にもたいへん強い素材です。大切に使えば一生使えると思いますよ。
※LWP003~005に使用のDCFは両面がポリエステルフィルムのため、ポリエステルに対しての取り扱いが必要です。
化学繊維なのに天然繊維のようなエイジングの楽しさがあって、長く使えるというのは嬉しいですね。最後に、LWP003〜005をご覧になって感想があればぜひ教えてください。
ダイニーマ®をデバイスのスリーブに使うというのは、思ってもいなかった発想でした。完成品を社内で共有したところ、透け感ある近未来的な見た目がいいねととても好評です。私自身、所有している本革製のiPadスリーブの厚みが気になることがあり、iPadを直にカバンに入れることが時々あります。このような薄手のスリーブなら厚みや擦れが気になりませんし、スマート感があってすごくいいですね。
企画時にお話を伺った際には、中に入れるデバイスの重量によっては縫製部が破れやすいかもしれないという懸念がありましたが、丁寧な縫製でぴったりとしていますし、その心配もほとんどないかと思います。
ありがたいお言葉でたいへん嬉しい思いです。本日は、ダイニーマ®の魅力についてお話しいただき、誠にありがとうございました。
ひじっくりと使い込んで、ダイニーマ®のファンになってください。