『LWP001 Ultimatelight 20L Backpack Tote(以下、LWP001)』は、世界最軽量クラスのナイロン生地「KAJIF ULTIMATELIGHT(カジフアルティメットライト)®」を使用した、バックパックにもトートバッグにもなるアイテムです。
LWP001を手にされた方なら、本体生地の薄さや軽さ、しなやかさに必ず驚かれると思いますが、もう一つの影の主役にもご注目を。LWP001のベルトには、ふたとおりの使い方を実現した特殊な構造のほか、その触り心地や太さ、長さにもデザイナーのこだわりが隠されていました。
ぜひ、「KAJIF ULTIMATELIGHT®」を製造するカジレーネでのインタビューもあわせてご覧ください。(Vol.03へ)
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宮沢哲(みやざわ・てつ)
「LIFEWORKPRODUCTS」ディレクター。国内外のインハウスデザイナーを経て、2007年にアンドデザインを設立。2011年よりNTTドコモ プロダクトデザインディレクターを兼務。
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南出圭一(みなみで・けいいち)
「LIFEWORKPRODCTS」デザイナー。国内外のインハウスデザイナーを経て、2016年にアンドデザインに参加。国内外におけるデザイン賞受賞多数。
LWP001と002について、発案当初は紙のような風合いの「タイベック®」という素材を使う予定だったということですね。結果として、LWP001にはとても薄いナイロン素材が使われていますが、その経緯について教えてください。
はじめはタイベック製のエコバッグとして作ろうとしていました。タイベックは、アパレルだけでなく建築資材や産業用の防護服、医療用、宇宙開発などに使用されてきた機能的な生地ですが、エコバッグとして試作を作って使ってみたところ、肉のドリップなどが染み付いてしまった時に手入れが難しいことがわかりました。ですから、途中からタイベックを諦めて新しい素材を探すことにしたんです。
薄くて軽いタイベックの特徴を軸にして新しい素材を探していたところ、世界最軽量クラスのナイロン生地である「KAJIF ULTIMATELIGHT®」を見つけて、ぜひ使いたいと思い採用に至ったという流れです。
タイベックを諦めたことで別の個性的な生地と出会えたということですね。生地以外の部分では、試作段階から製品に至るまでに手を入れた部分はありますか。
最大の変更点はベルトです。LWP001は、はじめの頃、ナップサックのようなかたちをしていて、試作にあたって構造の参考にしたのは肩かけできるビニール製の巾着袋でした。それは、紐を両側に引き絞って肩にかけて使うものですが、中央上部の穴から紐を引き出せばトートバッグとしても使えることに気が付いたんです。穴の大きさや縫い方、紐の通し方などを工夫して調整することで、ありそうでなかった構造にたどり着きました(※2WAYストラップ構造において意匠権申請済)。
ベルトを引き締めたり引き出してみると、するりと抵抗なく動いてくれるところが気持ちいいですね。これは本体生地が薄いことに加えて、ベルトのすべすべした質感もその理由の一つだと感じます。
そうですね。持ち手に使用しているナイロンのベルトは、綿のベルトに比べて摩擦が少ないのでストレスなく絞ることができるんです。さらに、質のよいものを使っていますので、ほどよいハリがあってすべすべと触り心地もよく、快適にお使いいただけると思っています。
確かに上品で美しいベルトなのですが、その分、生地に対してしっかりと重さも感じます。LWP001は約135グラムという軽さが一つの特徴ですが、軽いベルトを使えばさらに軽いバッグが作れたのではないでしょうか。
僕たちも同じことを考えて薄い綿のベルトを使った試作も作りましたが、全体的にペラペラとして頼りないバッグになってしまったんです。それを見て、僕たちが作りたいのは“究極的に軽いバッグ”ではなく、あくまで“自分たちが使いたいと思うバッグ”だというところに立ち返りました。それに、ベルトが重いからこそ本体生地の薄さや軽さが伝わることに気がつきましたし、何よりこのしっかりとしたベルトのおかげで一本の芯がとおったような力強さが出たと思っています。一方で、強度に大きく影響しない本体下部のベルトは、軽くて薄いものを使用することで全体の重量や価格を抑え、さらにはかさばらずに収納できるようにしました。
本体生地の薄さばかりに注目していましたが、ベルトがその魅力を引き立たせていたんですね。