ショルダーバッグでありトートバッグでもあるLWP002 X-Pac 30L Shoulder Tote。「X-Pac®(エックスパック)」という軽くて強い素材を採用したことで、さまざまなシーンで使い勝手のよいバッグができあがりました。
このバッグの試作から生産までを一手に引き受けてくださったのは、埼玉県三郷市に位置する株式会社アドのオリジナルブランドであるフルクリップです。試作から販売に至るまでの約3年もの長きにわたり、デザイナーの要望に根気強く対応していただいたことによって、LIFEWORKPRODUCTSとして納得のいくものづくりが叶いました。
私たちLWP編集部はアド本社にお伺いして、フルクリップが手がけたさまざまな製品や試作づくりの現場を拝見しつつ、LWP002をご担当いただいた平垣亨(ひらがき・とおる)さんにお話を伺いました。
まずはフルクリップについて(前編)、次にX-Pacの素材について(中編)、それからLWP002の制作の裏話(後編)について、計3本でお届けします。 (中編)
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平垣亨(ひらがき・とおる)さん
株式会社アド フルクリップ事業部 マネージャー兼プロダクトプランナー。自らデザインや構造設計、制作、営業も携わる。画期的なスライダーシステム「ジェットグライド」で特許を取得。趣味は、釣りやマウンテンバイク、筋トレ、観葉植物収集など多岐にわたる。
LWP002のバッグで使われている「X-Pac®(エックスパック)」は、どのような生地なのか教えてください。
元々はヨットの帆に使われていた素材で、基本的には3種類の素材を層にして特殊な方法で貼り合わせた生地です。3層のうち最も特徴的なのは中央の層で、ポリエステル製の強靭な紐をX状に組んだ「X-PLY®」という素材が使われています。表地は綿や帆布、そして裏地は撥水加工を施したポリエステル生地で作られることが多いですね。
X-Pac®・・・ヨットの帆でシェア世界一を誇るアメリカのDIMENSION-POLYANT社が開発した素材。
軽いことと、防水性が高いことが特徴です。それに中間層のX-PLY®は、引き裂きや摩耗に高い耐性を持っています。消防士の防火衣や警察などが着用する防弾ベストなどにも採用されているもので、ほかにもヨットの帆、クルーザーのコックピットの上部にあるやぐらの外壁や天井にも使われています。最近はアウトドアブランド各社も好んで使っていて、X-Pacで作られたバッグやポーチなどが販売されているのを目にする機会も多くなりました。
軽くて防水性があって引き裂きにも強いと聞くと万能な素材に思えますが、弱点はありますか?
すべての化繊にいえることですが熱には弱いですね。また、経年変化によって接着が弱まって3つの層が剥離したり、加水分解することは避けられません。とはいえ、水上での使用を見越して作られている生地ですから非常にタフで、タウンユースであればあまり神経質になる必要はないと考えています。
X-pacで製品において、ほかの素材にはない製造上の難しさなどはありますか。
裁断時に金属の刃がついた型を押さえつけて生地を抜き出すのですが、一般的な化繊を抜き出すのに比べると刃が5~6倍ほど摩耗しやすいので、型代がかさみます。それに、裁断するやいなや生地がくるくると筒状に丸まってしまうので、手で押さえながら縫製しないといけません。これは表地と裏地の収縮率の違いから起こるものだと考えていますが、だからこそ縫製後にはパリッとしたハリが出るというメリットもあるんですよ。