ショルダーバッグでありトートバッグでもあるLWP002 X-Pac 30L Shoulder Tote。「X-Pac®(エックスパック)」という軽くて強い素材を採用したことで、さまざまなシーンで使い勝手のよいバッグができあがりました。
このバッグの試作から生産までを一手に引き受けてくださったのは、埼玉県三郷市に位置する株式会社アドのオリジナルブランドであるフルクリップです。試作から販売に至るまでの約3年もの長きにわたり、デザイナーの要望に根気強く対応していただいたことによって、LIFEWORKPRODUCTSとして納得のいくものづくりが叶いました。
私たちLWP編集部はアド本社にお伺いして、フルクリップが手がけたさまざまな製品や試作づくりの現場を拝見しつつ、LWP002をご担当いただいた平垣亨(ひらがき・とおる)さんにお話を伺いました。
まずはフルクリップについて(前編)、次にX-Pacの素材について(中編)、それからLWP002の制作の裏話(後編)について、計3本でお届けします。(後編)
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平垣亨(ひらがき・とおる)さん
株式会社アド フルクリップ事業部 マネージャー兼プロダクトプランナー。自らデザインや構造設計、制作、営業も携わる。画期的なスライダーシステム「ジェットグライド」で特許を取得。趣味は、釣りやマウンテンバイク、筋トレ、観葉植物収集など多岐にわたる。
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南出圭一(みなみで・けいいち)
LIFEWORKPRODCTS」デザイナー。国内外のインハウスデザイナーを経て、2016年にアンドデザインに参加。国内外におけるデザイン賞受賞多数。
LWP002について、デザイナーの南出から製造の相談を受けたとき、平垣さんはどう感じましたか。
南出さんが縫った試作をお持ちいただいたのですが、決まっていないのは生地やパーツくらいでしたから、完成品をイメージしやすかったです。南出さんはいろんな素材に興味を持たれてご自身で調べたり海外から生地を個人輸入したりしていて、その探究心には驚かされました。ほんとうにたくさんの素材や形を検討し、僕たちはくりかえし試作を重ねたのですが、こんなにたくさんやりとりした経験ははじめてでした。
フルクリップでは、LWP002のどの部分をご担当されたのでしょうか?
デザインや最初の試作は南出さんですが、縫製のしやすさや製品としての耐久性などを考えて僕が仕様調整などに関わりました。また、ベルトのパーツやマジックテープなどのパーツについても強度などを考慮して提案しています。
当初、パーツ類は自分で選ぼうと思っていたんです。でも実際に探してみるとパーツは無数にあることを知りました。その組み合わせは無限大ですから、最適解を見つけることは容易ではないことをすぐに悟りました。ですから、バッグ製作の知識が豊富で、パーツの組み合わせによる使い勝手の違いを把握している平垣さんにご相談することにしたんです。
一緒にものづくりを進めていったのですね。フルクリップは独自のスライダーシステム『JETGLIDE®(ジェットグライド)』(詳しくはこちら)などの特許を持っていますし、パーツの組み合わせや選択は得意とするところだと思います。実際にLWP002に使われているパーツについて少しご説明いただけませんか。
例えばこのベルトです。シートベルトに似ていますが、それよりもしなやかで厚手のナイロン素材になります。これはハイブランドのバッグなどにも使われるような上質なもので光沢が上品でとても美しい。触り心地もなめらかですから体にフィットします。
僕は、口を留める円柱のマグネットが特に気に入っています。通常、バッグなどの留め具には板状のマグネットを使うことが多いですが、円柱にすることで面ではなく線で接地するので軽い力で開け閉めできるんです。磁石に厚みがあって磁力も強力ですからとても縫いにくかったと思うのですが、とても納得いくものになりました。
平垣さん、でき上がったものを手に取ってみていかがですか?
このバッグの最も特徴的な部分は絶妙に大きいサイズ感だと僕は思います。こんな幅は珍しいんじゃないでしょうか。僕は釣りだけでなくスケートボードやBMXなども嗜むのですが、大きなものや汚れ物や濡れたものも気軽に入れられて収納力があり、体にもよくフィットしますから、いろんなシーンで活用できるんじゃないかと想像を膨らませます。
それに、X-Pac®が使われていますから気兼ねなく使えそうですね。最後に、このプロジェクトを振り返ってみて、いかがだったでしょうか。
何よりもホッとした、というのが率直な感想です(笑)。最初にご相談いただいてから約3年かけて相当な数の試作を作ってきましたから、胸を撫で下ろしました。
僕たちが試作でお願いしたことは、素材を変えてみたいとかパーツの雰囲気がちょっと違うといった感覚的で微細なことでしたから、平垣さんからすれば面倒だったと思います(笑)。それでも平垣さんがおもしろがって取り組んでくれたからこそこうして納得のいくものに仕上がったと思うので、とても感謝しています。ありがとうございました。