「LIFEWORKPRODUCTS(ライフワークプロダクツ/以下、LWP)」のビジュアルデザインは、グラフィックデザイナーの岡本健(おかもと・けん)さん率いる「岡本健デザイン事務所」のメンバーによって支えられています。
ロゴマークやウェブサイト、名刺のデザインといったヴィジュアル面でのアートディレクションだけでなく、ブランドの根幹となるネーミングについても岡本さんとともに検討を重ねたことで、LWPのブランドはかたちづくられました。
そんなLWPの影の立役者である岡本さんにインタビューを行った様子をお届けします。まずは、「岡本健デザイン事務所」について(前編)、次にLWPのネーミングについて(中編)、それからロゴマークについて(後編)、計3本でお届けします。(後編)
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岡本健(おかもと・けん)さん
グラフィックデザイナー。千葉大学文学部行動科学科にて心理学を専攻、研究の一環で調べたグラフィックデザインに興味を持ち方向転換。株式会社ヴォル、株式会社佐藤卓デザイン事務所を経て2013年に独立。「LIFEWORKPRODUCTS」のアートディレクションを担当。
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宮沢哲(みやざわ・てつ)
「LIFEWORKPRODUCTS」ディレクター。国内外のインハウスデザイナーを経て、2007年にアンドデザインを設立。2011年よりNTTドコモ プロダクトデザインディレクターを兼務。
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南出圭一(みなみで・けいいち)
「LIFEWORKPRODCTS」デザイナー。国内外のインハウスデザイナーを経て、2016年にアンドデザインに参加。国内外におけるデザイン賞受賞多数。
紆余曲折を経てブランド名が「ライフワークプロダクツ」に決まったわけですが、その後の工程として、ロゴマークの意図についてもぜひ教えてください。
まず、見せ方として“読みにくい”ことにこだわりました。英語表記にしたのですが、「LIFE WORK PRODUCTS」ではなく単語間の半角アキを入れない「LIFEWORKPRODUCTS」とすることで、瞬時に判読できないようにしたんです。というのは、ライフもワークもプロダクツも誰もが読めて意味がわかるゆえに、面白味のないロゴマークになる懸念がありました。ですからわかりやすい名前はそのままに、“わからなくて面白い”見え方を狙ったんです。最終的には、ロゴマークだけでなくブランド名そのものも同様に変更することになりました。
なるほど。加えて、LWPのロゴマークは可変するところも特徴的だと思います。ウェブサイト上でページをスクロールする際、左上でカタカタッ…と動く様子を見ることができますね。アイテムにプリントされているロゴも一行だったり二行だったりしてとても柔軟です。
そうなんですよね。改行のタイミングもさまざまなところがとてもいいなと思いました。例えば三行にする際は「LIFE/WORK/PRODUCTS」とするのが一般的だと思いますが、「LIFEWO/RKPROD/UCTS」だったりする。「使いたいと思うものを作る」というブランドの自由なスタイルを体現してくれているようで嬉しかったですね。
形や素材が異なるさまざまなプロダクトにロゴマークをつけることが想定される場合、それぞれに合うように、縦タイプや横タイプなど何種類かのロゴマークを作ります。でもLWPの場合には、素材や大きさはおろか、どんなプロダクトを作るのかさえも何も決めていないところからのスタートだったので、どんなものでも対応できるロゴマークを考えてみたんです。
“まだ決まりきっていない”ブランドの状態を、LWPのアイデンティティとしてデザインしたということですね。こうしてみると、LWPのビジュアル面を中心に、ブランドをかたちづくる大きな役割を岡本健デザイン事務所が担ってこられたことがよくわかります。
ほんとうに心強い存在です。LWPのグラフィックについては、パッケージのロゴ配置など、岡本さんのご意見を仰ぎながら私や南出が進めている部分もあるのですが、「こうしてください」という指示ではなく、相談できて一緒に考えていただける。結果として、いつも心の底からよかったと思えるものになるので、岡本さんのことをとても信頼しています。
ありがとうございます。ブランディングの際、ルールをあまりにガチガチに決めてしまうとまるで呪いのようになってしまう。そうすると、何もできなくなってしまうし、お互い楽しくないしブランドも育たない。私はグラフィックデザイナーですが、自分がやりたいことを押し通すのではなく、最終的には自分が関わらなくてもブランドが崩れなければそれでいい。ブランドを見守る門番のような役目になれたらいいなと考えているんです。
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取材協力